専門26業務は派遣法改正で撤廃された|受け入れ期間の上限についても解説
初めて派遣社員を受け入れる企業では、派遣に関する詳しい内容がわからずお困りの人も多いでしょう。派遣を利用する場合、受け入れ期間に制限があるので注意が必要です。本記事では、26業務の概要や受け入れ期間の制限について詳しく解説します。派遣法改正による26業務の撤廃についても解説するため、参考にしてみてください。
Contents
労働者派遣法とは
労働者派遣法とは、派遣事業の適切な運用や派遣社員の保護のために定められた法律です。
労働者派遣法が施行されたのは1986年のことで、改正を経て現在では正式名称を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」といいます。労働基準法第6条によると、第三者が労働者と企業との間に介入し、中間搾取することは禁じられています。しかし労働者派遣のような事業を行う会社があったために、労働者を保護するため、この法律が制定されました。
派遣の種類
一般的に「派遣社員」とくくられている雇用形態ですが、同じ派遣でも「一般派遣」と「特定派遣」では詳細が異なります。以下で詳細を解説します。
一般派遣
一般派遣とは、一般労働者派遣事業を指します。一般派遣には登録、日雇い、臨時などが存在します。また雇用方法は、派遣元に登録している派遣社員が、条件と合致した派遣先で一定期間就業するものです。雇用契約は登録時ではなく、派遣先で就業が確定した後に締結します。なお、一般派遣を取り扱う派遣元は、厚生労働大臣の許可が必要です。
特定派遣
一方で特定派遣は、特定労働者派遣事業を指します。特定派遣は、派遣会社で正社員として雇用された後に、必要とされる企業で一定期間勤務する働き方です。派遣元と労働者が無期限の雇用契約を結ぶため、派遣先がない期間にも給与の支払いが発生します。
一般労働者派遣事業のように許可制ではなく、厚生労働省への届出だけで派遣元は特定派遣を取り扱えました。しかし、特定派遣は2015年に廃止されています。
派遣社員の受け入れ期間の上限は3年と決められている
派遣社員には、同じ派遣先で3年以上勤務できないという制限があります。このルールがあるのは、派遣社員に偏り、正社員の雇用機会がなくなってしまうことを防ぐためです。
3年以上勤務させる場合、派遣元は、該当の派遣社員を派遣先の会社で、正社員として雇用してもらえるように掛け合う、といったような雇用安定措置の義務や努力義務が課されます。派遣期間の制限があるのは、派遣元と有期雇用派遣契約を締結している派遣社員です。
派遣における専門26業務とは|3年以上継続して雇用できる職種
派遣のなかでも専門26業務といわれる、派遣社員の能力によって成果が変わるような業種があります。該当の業種は以下です。
- ソフトウェア開発
- 機械設計
- 放送機器等操作
- 放送番組等演出
- 事務用機器操作
- 翻訳、通訳、速記
- 秘書
- ファイリング
- 調査
- 財務処理
- 取引文書作成
- デモンストレーション
- 添乗
- 建築物清掃
- 建築設備運転、点検、整備
- 案内・受付、駐車場管理等
- 研究開発
- 事業の実施体制等の企画、立案
- 書籍等の制作・編集
- 広告デザイン
- インテリアコーディネーター
- アナウンサー
- OAインストラクション
- テレマーケティングの営業
- セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
- 放送番組等における大道具・小道具スタッフ
通常、派遣社員には3年の期間上限が設けられていますが、専門26業務にはその制限がありませんでした。
2015年の法改正で専門26業務が撤廃された
2015年9月に施行された労働者派遣法の改正により、派遣は臨時的で一時的な雇用であるという考え方が強くなったため、専門26業務のしくみも撤廃されました。
この改正により、業務内容に関わらず派遣社員の受け入れ期間の上限が統一され、全ての派遣社員が3年間の期間制限のもと働くことになったのです。
専門26業務が撤廃された背景
2015年の法改正により、特定派遣が廃止されましたが、それに分類されていた専門26業務はなぜ撤廃されることになったのでしょうか。
雇用の安定につながらなかった
3年の期間上限がないとはいえ、専門26業務の雇用形態は無期雇用ではなく派遣であるため、契約更新が必要で雇用の安定にはつながりませんでした。なぜなら期限なしで雇用はされているものの、企業側の都合で契約を解除できる労働力という立ち位置だったからです。
脱法行為が多発した
専門26業務には3年の期間上限がないことで、その他の業種に該当する派遣社員の雇用にも問題が生じました。たとえば、派遣社員の仕事を強引に専門26業務に当てはめ、受け入れ期間の上限である3年を超えて働かせるという脱法行為です。
現在の派遣期間のルール
2015年の法改正後の派遣期間には、どのようなルールが設けられているのかを解説します。
個人単位
個人単位でのルールとしては、同じ派遣社員を同じ派遣先の同じ部署やグループで、3年以上働かせることはできません。もしも同じ派遣社員を3年以上同じ派遣先で働かせたい場合には、別の部署に移動させたり別の業務を任せたりしなければいけません。
事業所単位
事業所単位のルールとしては、同じ派遣元から3年以上派遣社員を受け入れることはできません。これは異なる派遣社員を同じ派遣元から受け入れる場合でも同様で、3年以上の受け入れは認められません。また、事業所単位の受け入れ期間制限と個人単位の受け入れ期間制限では、事業所単位の制限が優先されます。
事業所単位の派遣期間は延長可能
派遣の期間上限は3年と解説してきましたが、事業所単位の受け入れ期間の制限に関しては延長が可能です。
延長するためには、派遣の受け入れ期間の制限に抵触する日の1か月前までに、過半数労働組合か過半数の代表者から意見を聴取する必要があります。意見聴取で異議があった場合、延長前の派遣の受け入れ期間が経過する日の前日までに、延長の理由やその期間、意見への対応方法について説明しなければいけません。また意見聴取は、期間延長のたびに都度行う必要があります。
専門26業務の撤廃と同時に整備された制度
2015年の法改正で撤廃された専門26業務に代わり、今まで問題になっていたことを、クリアにするため整備された制度について解説します。
労働契約申込みみなし制度
2015年10月より、労働契約申込みみなし制度が施行されました。本制度では、事業所単位や個人単位の受け入れ期間の制限に反して、派遣社員を受け入れた場合、その時点で派遣先が派遣社員に、直接労働契約を申し込んだとみなされます。
この制度における違法派遣となる5つの類型は、以下です。
- 派遣スタッフを禁止業務に従事させる
- 無許可の事業主から派遣スタッフを受け入れる
- 事業所単位の期間制限に反して派遣スタッフを受け入れる
- 個人単位の期間制限に反して派遣スタッフを受け入れる
- いわゆる偽装請負
しかし派遣先が違法派遣について知らない、もしくは知らなかったことに過失がないと判断された場合は、本制度は適用されません。
均衡待遇の推進
派遣元事業者には、派遣社員と派遣先の同種業務に従事する正社員の待遇の均衡を「配慮する義務」と「説明する義務」があります。具体的には、「賃金水準の情報提供」「教育訓練の実施」「福利厚生施設の利用」への配慮があげられます。法改正前は努力義務でしたが、配慮義務となったことで、より厳しく対応が求められるものとなりました。
キャリアアップ措置
キャリアアップ措置とは、派遣社員のキャリアアップのために義務づけられた制度です。派遣元事業者には、段階的・体系的な教育訓練や、希望者に対するキャリア・コンサルティングの実施が義務付けられました。また派遣先には、派遣元から依頼があった場合、派遣スタッフの職務遂行状況、遂行能力の向上度合い、賃金水準などの必要な情報提供に応じることへの配慮義務、努力義務が課されています。
まとめ
2015年の法改正により、専門26業務は撤廃され、いかなる派遣の場合も勤務期間の上限は3年となりました。よい人材であった場合でも、3年の期間は守るか、直接雇用を検討する必要があります。
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