派遣の契約で必要な記載内容とは?手順や注意点、法改正を解説

派遣労働者を受け入れるためには、労働者派遣法に従った契約の締結が必要です。契約の種類や内容が定められているため、それに則って契約する必要があります。本記事では、派遣の契約の手順や注意点、法改正について解説します。派遣労働者を雇用する際の参考にしてください。

派遣契約の概要

まずは、人材派遣や労働者派遣法の概要を解説します。

人材派遣とは

人材派遣とは、派遣会社と雇用関係にある人材を自社(派遣先)に派遣して、自社の業務に従事してもらうサービスのことです。派遣労働者は、派遣先の指揮命令下で働きます。しかし、雇用契約は派遣先ではなく、派遣元と行います。従って、派遣労働者に給料の支払いを行うのも、派遣先ではなく、派遣元です。

労働者は派遣元に派遣登録を行いますが、登録時点で雇用契約は成立していません。就業先が決まった時点で雇用契約を結びます。

労働者派遣法とは

労働者派遣法の正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」です。

労働者派遣法の主な目的は「派遣労働者の保護」であり、不安定な派遣労働者の労働条件の保護を図るため、1986年に施行されました。その後、産業界の規制緩和や労働者保護強化を理由にして何度も改正が行われ、現在に至ります。

主な派遣契約書類

派遣先が派遣契約を受け入れる際に必要な書類について解説します。実際の手続きで書類不備のないよう、こちらを参考に進めてください。

労働者派遣基本契約書(基本契約書)

労働者派遣基本契約書は、派遣元と派遣先の間で取り交わす契約書です。この書類には、派遣料金やお互いの義務、禁止事項など基本的な取引事項を記載します。

労働者派遣基本契約書は、必ずしも必要な書類ではありません。しかし、取引開始後に発生し得るトラブルを考慮して、リスク回避のために締結している企業も多くあります。

労働者派遣個別契約書(個別契約書)

労働者派遣個別契約書は、派遣労働者を受け入れるための個別契約のために作成される書類です。こちらの書類は、労働者派遣基本契約書とは異なり、必ず作成しなければなりません。

書類には、「労働者派遣法第26条」の労働者派遣契約に定められている内容を盛り込みます。具体的には、賃金・労働時間、残業の有無など具体的な雇用契約条件を記載します。

派遣契約のメリット・デメリット

派遣労働者の雇用にはメリットだけでなく、デメリットもあります。それぞれについて解説します。

派遣契約のメリット

派遣労働者は、正社員のように雇用し続ける必要がありません。そのため、人手を確保したい時期だけ人材を増員できます。また、社会保険をはじめとした労務管理や人材確保のための採用活動は派遣元が行うため、人材確保に伴う手間や人件費の削減にもなります。

さらに、業務委託契約では直接指示ができないのに対し、派遣契約であれば自社の従業員と同様に直接指示ができる点も、派遣契約のメリットといえるでしょう。

派遣契約のデメリット

派遣契約では、派遣労働者に任せられる業務範囲を、契約時に明確に設定します。契約にない業務をさせることはできません。

また、同一業務の従事には3年間の期間制限があります。期間を過ぎるたびに、新しい人材を一から指導する手間が発生する場合もあるでしょう。

さらに、直接指示が可能というメリットを活かすためには、派遣労働者に指揮命令をする自社従業員の配置が必要です。派遣労働者のマネジメントを担える人材がいない場合には、人材の確保や育成にコストをかけなければなりません。

派遣契約を締結する流れ

ここでは、派遣契約の締結までの手順を解説します。

1.基本契約の締結

基本契約は義務ではありませんが、後々のリスク回避のために作成するとよいでしょう。第26条の法定事項に含まれない派遣料金や損害賠償などを記載した書類を作成し、派遣先と派遣元で基本契約書の締結をします。

2.事業所抵触日の通知

派遣先は、派遣元へ事業所抵触日の通知が必要です。抵触日とは、派遣受入期間の制限を超える日であり、原則3年間とされています。

3.個別契約の締結

労働者派遣法第26条所定の事項を定めた個別契約書の締結をします。個別契約は、派遣労働者を受け入れるたびに締結する必要があります。

4.派遣先管理台帳の作成と保存

派遣先は、派遣労働者ごとに「派遣先管理台帳」を作成します。台帳には、派遣労働者の氏名や就労日、就業時間、業務内容など、労働者派遣法第42条で定められた内容の記載が義務づけられています。

労働者派遣で必要な契約と内容

労働者派遣では、派遣元と派遣先の間で次のやり取りが必要です。

  • 基本契約
  • 個別契約
  • 抵触日の通知
  • 待遇などに関する情報提供

以下でそれぞれについて詳しく解説します。

基本契約

基本契約の書面の取り交わしは、派遣元と派遣先にて行われますが、必須ではありません。書面に記載する主な項目は次のとおりです。

  • 契約の目的
  • 派遣料金と支払い方法・支払い時期
  • 派遣労働者が起こした賠償責任の規定
  • 秘密保持の定め
  • 債務不履行の際の遅延損害金
  • 契約期間と更新の方法
  • 派遣労働者の個人情報の取り扱い
  • 中途解約の取り決め など

なお、基本契約には具体的な業務内容の契約は含まれません。

個別契約

個別契約の書面には、労働者派遣法第26条で内容が定められている派遣労働者の保護に関する内容が記載されています。派遣労働者を雇用する際には必ず作成します。書面に記載する項目は次のとおりです。

  • 業務内容
  • 就業の場所
  • 直接指導者の役職および氏名
  • 派遣の期間と就業する日
  • 業務の開始・終了の時刻と休憩時間
  • 派遣労働者の安全・衛生に関する事項
  • 苦情の申し出があったときの対応方法
  • 雇用安定措置
  • 紹介派遣に関する事項(紹介派遣の場合)
  • 派遣元責任者と派遣先責任者の氏名・連絡先
  • 就業時間の延長に関する取り決め
  • 派遣労働者の福祉増進に関する事項
  • 派遣受入期間の制限を受けない業務に関する事項

抵触日の通知

派遣社員の「抵触日」は、派遣期間終了日の翌日を示していますが、この「抵触日」を過ぎた派遣労働者は同一の職場での勤務ができません。抵触日通知の書面に記載する項目は、以下のとおりです。

  • 派遣元の事業所名と代表者名
  • 派遣先の所在地と事業所名、代表者名
  • 派遣受入事業所の所在地と事業所名
  • 派遣可能期間の抵触日(派遣可能期間の制限を抵触することとなる最初の日(3年を超える日))

待遇などに関する情報提供

厚生労働省が働き方改革として、非正規労働者の待遇改善を目的に施行した「同一労働同一賃金」には、派遣労働者も他の労働者と同等の業務をした場合に、賃金や各種手当、福利厚生、教育訓練などで、不合理な待遇格差をなくしたいという意図があります。

これを踏まえたうえで、派遣先は派遣元に対し、派遣労働者の待遇がどのように定められているかを提示しなければなりません。そして、派遣元は、派遣先から得た待遇情報を派遣労働者に説明する義務を負います。

派遣契約書の注意事項

ここからは、派遣契約書に関する注意事項を解説します。

派遣先は雇用契約書を発行しない

派遣労働者が雇用契約を結ぶのは、あくまで派遣元です。派遣先から派遣労働者に対して、雇用契約書を発行することはありません。

従事する業務範囲や業務場所といった労働条件に関しても、派遣労働者に直接通知を行うのは派遣元です。派遣元が派遣労働者に対して労働条件通知書を作成し、通知をします。これを派遣労働者が受領することにより、派遣契約が締結されます。

書類作成者に注意

派遣契約にはいくつかの書類が必要ですが、書類ごとに誰が作成するのかが異なります。「基本契約書」「個別契約書」の2種類は派遣元が作成します。派遣先が作成する書類は、「抵触日の通知書」「待遇などに関する情報提供の書類」「派遣先管理台帳」です。

「派遣先管理台帳」は3年間保管

「派遣先管理台帳」は、派遣先が派遣労働者を受け入れる際に作成する書類です。派遣労働者の労働日や労働時間などを記録します。派遣先管理台帳は、派遣就業の終了日より3年間の保管が義務づけられているため、労働期間が終了しても処分してしまわないように注意しましょう。

派遣法改正の内容

「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」は、1986年に施行されてから何度か改正が行われています。ここでは、主な改正事案について解説します。

2020年4月の改正「同一労働同一賃金」

2020年4月の改正による改正点は、以下の3点です。

  1. 不合理な待遇差をなくすための規定の整備
  2. 派遣労働者の待遇に関する説明義務の強化
  3. 裁判外紛争解決手続(行政ADR)の規定の整備

※参考:労働者派遣法の改定について|厚生労働省

「同一労働同一賃金」は、正規雇用の従業員と派遣労働者との待遇格差を解消する目的があります。同じ労働に従事している場合、同程度の賃金を支払うべきという意図のもと、2018年に成立した「働き方改革関連法」推進の一環として実施されました。

2021年1月の改正「教育訓練・休業手当・電磁記録」

これまでは、派遣元に対する、派遣労働者へのキャリアコンサルティングや教育訓練などの説明措置には規定がありませんでした。しかし、2021年1月の改正により、派遣労働者に説明を行うことが必要になりました。

また、日雇派遣における労働者派遣契約の解除で休業手当の支払い、派遣労働者からの苦情処理は派遣先による対応の義務化に関する内容も改正されています。加えて、労働者派遣契約が電磁的記録による作成が可能になりました。

2021年4月の改正「希望の聴取・マージン率」

雇用安定措置に関して派遣労働者から希望する当該措置の聴取が、派遣元に義務づけられました。また、聴取した内容は管理台帳への記載も必須です。

なお、雇用安定措置に含まれる内容としては、派遣先への直接雇用や新たな雇用先の紹介、派遣元での無期雇用、有給での職業訓練や紹介予定派遣などが挙げられます。また、派遣先から派遣元へ支払われるマージン率や労働者の平均賃金などのインターネットによる情報の開示も必要になりました。

まとめ

派遣契約は、人手が足りない時期だけ人材を増員できるうえ、労務の管理は派遣元が行うため、一時的な人材確保に適した手段です。派遣元と取り交わす内容や、準備する書類を確認のうえ、不備なく手続きを進めましょう。

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