二重請負・偽装請負・二重派遣とは|それぞれの罰則や予防方法も解説

職場で派遣や業務委託の利用を検討するときは、まず派遣や業務委託に関しての情報収集から始めましょう。注意しなければトラブルや法律に抵触する可能性もあるため、各契約の基礎知識から重要です。本記事では、派遣や業務委託を利用する際に起こりやすいトラブルや、その罰則について解説します。偽装請負や二重派遣の予防方法についても解説するため、ぜひ参考にしてください。

派遣に関する基礎知識

まずは、派遣とはどのようなものなのかについての基礎知識を解説します。

派遣とは

派遣とは、1986年の労働者派遣法施行により開始された働き方で、人材派遣企業が雇用している派遣社員を依頼先の企業に派遣して、業務を遂行してもらう契約のことです。派遣社員は、勤務先の企業ではなく、人材派遣企業と雇用契約を締結します。ただし、指揮命令権は、派遣を依頼した企業にあります。

派遣の種類

派遣は、以下の3つの種類に分けられます。

  • 有期雇用派遣:ある一定の期間だけ雇用契約を結ぶ形態
  • 無期雇用派遣:期間の定めがない雇用契約を結ぶ形態
  • 紹介予定派遣:将来的に、派遣社員が派遣を依頼した企業に直接雇用されることを前提とした雇用契約を結ぶ形態

業務委託に関する基礎知識

次に、業務委託とはどのようなものなのかについて解説します。

業務委託とは

業務委託は、自社の仕事を外部企業や個人事業主に依頼する契約です。アウトソーシングともよばれます。契約社員とは異なり、雇用契約を締結しない点が特徴です。なお、業務委託契約という言葉は、民法で定められた正式な契約の表現ではありません。あくまで実務で使用されている表現であることに注意しましょう。

業務委託の種類

業務委託も大きく3つの種類に分類できます。

  • 請負契約
  • 委任契約
  • 準委任契約

請負契約は、依頼した業務の結果に対して報酬を支払う契約形態です。ITシステムエンジニアやライターが該当します。

委任契約は、法律行為をともなう業務の遂行を目的とした契約形態です。また、業務の結果ではなく、業務の内容に対して報酬が発生します。たとえば、敗訴代理人の場合、裁判で敗訴しても報酬の支払いが必要です。

準委任契約は、業務の遂行に対して報酬を支払う契約形態のうち、法律行為をともなわない業務に対する契約を指します。

派遣や業務委託を利用するメリット

正社員や契約社員のような雇用ではなく、派遣や業務委託を利用すると、次のようなメリットがあります。

コスト削減

人材採用する際には、採用情報サイトへの出稿や選考に、費用や時間がかかるのが一般的です。一方、派遣や業務委託であれば、これらの採用にかかるコストを削減できます。

また、必要なスキルのある派遣や業務委託に依頼すれば、新人育成にともなう担当者の業務負担や残業時間を削減できます。さらに、派遣や業務委託であれば人件費も発生しません。

コア業務へのリソース集中

事務処理や問い合わせ対応など、売上に直接影響しない業務を外部に依頼できれば、自社の正社員をより重要度の高いコア業務に集中させられます。社内の人材のリソースをコア業務へ集中させることにより、企業の生産性向上につながるでしょう。

人手不足の解消

派遣や業務委託を活用すれば、業務やプロジェクトに必要な、特定の専門知識やスキルを持った人材を確保できます。また、一時的に人的リソースが不足する場合にも、必要な期間だけ効率よく人手を補充できるでしょう。

派遣や業務委託で起こりやすいトラブル

派遣や業務委託には多くのメリットがある一方で、起こり得るトラブルもあります。

偽装請負

偽装請負は、形式上は業務委託契約ではあるにも関わらず、実態は派遣になっている状態のことです。たとえば、発注者が業務委託を依頼した相手に対し、直接、指揮命令してしまった場合に偽装契約であると判断されます。

偽装請負は、業務委託契約のうち、請負契約でも委任・準委任契約でも起こる可能性があります。また、意図して偽装請負をしていなくても起こり得るトラブルであるため、契約について正しく理解することが必要です。

二重派遣

二重派遣とは、人材派遣企業から送られてきた派遣社員を、派遣を依頼した企業が別の企業に派遣してしまうことです。

二重派遣では、派遣社員と雇用関係も派遣契約もない企業が、指揮命令することになる点が問題となります。なお、二重派遣は、IT業界や製造業で発生しやすい事案といわれています。

二重請負|発注先から請負った業務をさらに下請けに出しても違法性はない

二重派遣は、法律でも違反事項であると明文化されています。一方で、二重請負(発注者から請け負った業務を、別の企業に請け負わせる行為)には、違法性がありません。

ただし、二重請負を依頼する相手(最終請負者)が個人である場合には、偽装請負やトラブルがないよう注意が必要です。

偽装請負や二重派遣が禁止されている理由

偽装請負や二重派遣はなぜ禁止されているのでしょうか。主な理由を2点紹介します。

労働者の不利益につながるため

偽装請負では、労働時間の上限以上に働かせたり、残業代が発生しなかったりするだけでなく、解雇権が濫用されるという問題が起こる可能性があります。

二重派遣では、企業の都合で労働条件が変更される可能性があるうえに、中間搾取が起こるケースもあるため禁止されています。

責任の所在が不明瞭になるため

労働者に不測の事態があった場合、偽装請負や二重派遣では、責任の所在が不明瞭になってしまいます。責任の所存が明らかでなく、派遣元や派遣の依頼先が対応できない場合、労働者が自己責任で対応しなければならなくなる恐れもあるでしょう。偽装請負や二重派遣は、労働者が保護されない可能性があるため、禁止とされています。

偽装請負や二重派遣が発覚した場合の罰則

偽装請負や二重派遣が発覚すると罰則を受ける可能性もあります。具体的な処罰の内容を解説します。

関連法による処罰

職業安定法では、許可を受けた企業以外が労働者供給事業を行うことを禁止しています。また、無許可で供給される労働者を働かせることも認められていません。労働者派遣法では、労働者派遣事業は厚生労働大臣の許可を受けなければならず、偽装請負や二重派遣は、無許可の事業になるため法律違反です。

労働基準法では、中間搾取が禁止されているため、偽装請負や二重派遣で、手数料を得ていると法律違反に該当します。いずれの法律も、違反すれば、1年以下の懲役もしくは、100万円(労働基準法は50万円)以下の罰金が科せられる恐れがあります。これらに該当する対応は行わないようにしてください。

※参考:職業安定法(第五章)|e-Gov
※参考:労働者派遣法(第六章)|e-Gov
※参考:労働基準法(第十三章)|e-Gov

その他の処罰

偽装請負や二重派遣を行うと、職業安定法と労働者派遣法、労働基準法の違反以外に、厚生労働大臣からの行政指導や是正措置勧告を受ける可能性があります。勧告を受けても改善が見られない場合は、社名を公表される場合もあるため注意しましょう。

また、違法派遣と知りながら派遣社員を受け入れた企業は、労働契約申込みみなし制度により、ペナルティが課される場合もあります。労働契約申込みみなし制度とは、二重派遣をはじめとした違法派遣を抑止する制度です。

偽装請負や二重派遣の罰則対象となる企業

偽装請負や二重派遣はどのような企業が罰則対象になるのかを解説します。

偽装請負

偽装請負の場合は、労働者派遣法・職業安定法・労働基準法いずれの法律違反であっても、発注者と受注者の両方が罰則の対象になります。

二重派遣

二重派遣の場合、職業安定法を違反した際の罰則は、派遣社員を再派遣した企業に加え、再派遣を受け入れた企業が対象になります。また、労働基準法の罰則は、派遣社員を再派遣した企業が対象です。また、意図的ではなく、二重派遣であると知らずに派遣社員を受け入れていた場合には、罰則が適用されません。

偽装請負や二重派遣の予防方法

最後に、偽装請負や二重派遣に該当しないよう注意する方法を3つ解説します。

派遣や業務委託について情報収集する

偽装請負や二重派遣で起こりやすいトラブルを予防するためには、まず派遣や業務委託の基本を理解しておくことが重要です。ルールや法律を理解したうえで運用すれば、無自覚に法律違反してしまう事態を回避できるでしょう。

契約書に指揮命令権について明記する

業務を始める前に交わす契約書のなかに、指揮命令権に関する事項を明記しておきましょう。契約時に確認しておけば、認識を合わせられるだけでなく、やりとりを書面に残しておけます。

また、派遣社員の受け入れ業務を遂行してもらう際にも、実際の指揮命令者と契約書の指揮命令者が合致しているか、確認する必要があります。

業務実態を把握する

偽装請負や二重派遣に該当する法律違反をしているかどうかの判断は、契約内容と業務の実態で判断されます。

スタッフの派遣後も、派遣会社は定期的に派遣スタッフへヒアリングを実施し、業務実態が契約内容と乖離していないかや、現場の指揮命令に問題がないかを確認する必要があります。

まとめ

業務委託や派遣は、コスト削減や人的リソースの確保に有効な手段です。しかし、業務委託や派遣を利用する際のルールや注意事項を知らずに運用していると、法律違反行為で罰則を受ける恐れがあります。業務委託や派遣を利用する前には、基本的な知識を把握しておきましょう。

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