エンジニアリングにかかる費用の考え方|見積もりの構成要素や節約する方法を解説

エンジニアリングのベンダーから提示された見積書を見て、費用の高さに驚き、悩んではいないでしょうか。金額の妥当性が分からず、稟議を進めるべきか迷う人もいるはずです。この記事では、エンジニアリングにかかる費用の考え方や、構成要素を解説します。エンジニアリングの費用を正しく理解し、そのうえでコストカットを図るヒントに役立ててください。

エンジニアリングとは何か

費用の妥当性を正しく把握するためには、エンジニアリングとは何かを知っておく必要があります。はじめに、エンジニアリングの概要を解説します。

エンジニアリングの定義

エンジニアリングは英語で「engineering」と書き、工学と訳されます。科学技術を利用した生産技術や、その研究の総称です。ヨーロッパでは工学だけを指し、国内ではより広義に使われるといった違いがあります。

エンジニアリングが果たしている役割

エンジニアリングは、社会課題を解決し、より良くする技術開発や改善に利用されます。たとえば、以下もエンジニアリングの範疇です。

  • インフラの開発や整備
  • 安全な水資源の供給
  • 楽曲制作、音響機器の調整 など

ITエンジニアリングは大きく8種類

多様なエンジニアリングのうち、近年はITエンジニアリングが注目されています。ITエンジニアリングは、以下の8種類に分類されます。

  • インフラエンジニアリング
  • システムエンジニアリング
  • Webエンジニアリング
  • サーバーエンジニアリング
  • データベースエンジニアリング
  • ネットワークエンジニアリング
  • セキュリティエンジニアリング
  • AIエンジニアリング

技術進歩によるITエンジニアリングの発展は、IT分野の人材不足を解消する手段としても期待されています。

エンジニアリング費用の基本的な考え方

エンジニアリングにかかる費用の考え方を解説します。見積書にある「人月」「人日」の違いも理解しましょう。

エンジニアリング費用の人件費は「単価×作業工数」で計算されている

エンジニアリングの費用のうち、大きな部分を占めるエンジニアの人件費は、通常「単価×作業工数」で算出します。

単価とは、エンジニアの単位時間あたりにかかる価格です。エンジニアのスキルや作業内容の難易度などで決まります。労務費や販売管理費、ベンダーの利益などが含まれる場合もあります。

工数とは、稼働するエンジニアの作業量です。人月、もしくは人日の単位で計算されます。

エンジニアリングの「人月」とは

人月(にんげつ)とは、エンジニア1人が1か月働いてできる作業量を「1」とする考え方です。たとえば、1日8時間労働では、月の稼働時間は8時間×20日=160時間。この160時間でできる作業量を、1人月と呼びます。

人月は、必要なエンジニアの人数とイコールではない点に注意しましょう。5人月であれば作業完遂までに、エンジニア1人の場合は5か月かかり、5人稼働すれば1か月で終わる作業量を意味します。

エンジニアリングの「人日」とは

エンジニアリングの費用項目では、人日(にんにち)もよく登場します。人日は、1人が1日(8時間)働いてこなせる作業量を指します。

5人日であれば作業完遂までに、エンジニアが1人なら5日かかり、5人稼働すれば1日で完了する作業量を意味します。

エンジニアリング費用の算出方法

エンジニアリングの費用は、どのような項目から構成されるのでしょうか。費用の軸となる人件費を構成する単価と作業工数、またその他の費用について解説します。

単価の算出方法

高いスキルを持つエンジニアや、作業内容が難しいほど、単価が上がります。

エンジニアは「経験年数が長い」「需要の高い言語を使える」人ほど、高単価です。基幹を構築するインフラ系も、高単価の傾向があります。

また、単純作業よりも、折衝や管理が必要になる上流工程の方が、単価が上がります。

作業工数の算出方法

作業工数は、作業完遂までに必要となる人員と期間で決まります。「作業工数=人員×時間」であると押さえましょう。前述した人月・人日の考え方で導かれます。

その他の費用

エンジニアリングの費用には、その他の費用が加算される場合があります。代表的な費用は、リスク費用や管理費、実費などです。それぞれの費用が何を示すのか、また費用に加算される理由は次章で詳しく解説します。

エンジニアリングの費用見積もりに入る項目

エンジニアリングの費用には、他の項目も加算されます。3つの費用を解説します。

リスク費用

リスク費用とは、「工数が想定以上にかかった」などの見積もり段階では見通せない事態が発生した場合に充当する費用です。リスク費用の算出方法は、企業によりさまざまで、定額・定率の費用をあらかじめ加算するケース、工数を想定より多めに見積もるケースなどが見られます。

管理費

管理費とは、案件の管理に関わる費用です。案件の進行・完遂には、以下のように雑多なタスクが発生します。

  • スケジュール管理
  • 進捗管理
  • 要員管理
  • 不具合の管理
  • 仕様変更の管理 など

請負契約のエンジニアリングでは、エンジニアや案件の進行を自社で直接管理できません。管理も請負側に委託せざるを得ず、管理費が計上されます。

実費

実費とは、案件の進行にかかったその他の費用です。エンジニアを遠方から招集した場合の交通費や宿泊費などが該当します。

エンジニアリングの費用見積もりの項目例

エンジニアリングにかかる費用は、見積書に「作業に関する費用」「機材・設備費用」に分けて記載されるのが一般的です。エンジニアリングの費用は、実際にどのように記載されるのか解説します。

作業に関する費用

実際のエンジニアリング作業に関する費用としては、以下の項目が記載されます。

  • 要件定義
  • 設計
  • 開発・実装
  • テスト
  • スケジュール管理
  • システムの導入サポート
  • 導入後の運用保守 など

要件定義とはシステムに搭載する機能を定義する工程です。設計は、要件定義を実現するための土台を形作る費用で、工程ごとに細分化される場合もあります。

開発・実装は、設計書に基づきシステムにプログラミングを施す費用、正常に動作するかの確認にかかる費用がテストに該当します。導入や運用保守にかかる費用も、エンジニアリングにかかる費用として記載されます。

機材・設備費用

案件遂行のために、新しく機材の購入が必要になるケースもあるでしょう。こうした場合、機材購入にかかる費用が、「機材・設備費用」または「設備購入費用」として計上されます。

また、前章にある「管理費」が、機材・設備費用として記載されている場合もあります。

エンジニアリング費用の妥当性をチェックするポイント

エンジニアリングの費用が妥当かをチェックするポイントは3つです。それぞれを詳しく解説します。

エンジニアの単価

エンジニアの単価には、相場があります。相場と見積書を比較すると、妥当性がチェックでき、余計な出費を抑えられます。

エンジニアの単価相場は、およそ以下の通りです。

  • 業態:経験豊富な業務委託ほど高い
  • 職種:上流工程ほど高い
  • 地域:都市部ほど高い

また、単価は経験やスキル、案件規模の影響も受けます。

作業工数の過不足

費用の妥当性は、作業工数の過不足をチェックすることでも測れます。作業内容は明確か、不必要な工程が含まれていないかなど、細かく確認しましょう。

エンジニアリングの費用に含まれる工数の妥当性を知るには、FP(ファンクションポイント)法が効果的です。FP法の詳細は次章で解説します。

前提条件

前提条件とは、作業の対象範囲や使用技術、要件の充足度などです。前提条件に齟齬があると、見積もりに無駄が生じたり、二度手間になったりします。全体に影響を及ぼす重要なポイントであるため、丁寧にチェックしてください。システムに使う言語、使用するハードウェア・ソフトウェアなどの機材も確認します。

エンジニアリング費用の見積もり方法5つ

エンジニアリングの費用を算出する方法は、さまざまです。ここではよく利用される5つの手法を、詳しく解説します。

FP(ファンクションポイント)法

FP法は、機能ごとに難易度を点数化して見積もりを算出する手法です。システムの規模を定量化でき、機能が出そろった時点で見積もりを作成できる点や、必要な機能に応じた見積もりを誰でも導ける点がメリットです。

類推法

類推法は、過去に手掛けた類似案件を参考にして見積もる手法です。実績があればスピーディに、比較的精度の高い見積りができます。ただし、過去に類似案件を経験していないと、類推法での費用算出はできません。

パラメトリック法

パラメトリック法とは、過去の類似案件を参考に、工数や目的、規模を加味して数値化。数学的な関数にして、工数や費用を算出する手法です。数値化により見積もりが明確になり、納得感を得やすい反面、反映されない工数が発生する可能性があります。

プライスツーウィン法

プライスツーウィン法は、予算ありきで見積もる手法です。顧客の予算に合わせて見積もるため、予算超過の懸念はありません。ただし、あくまで予算内での作業遂行となり、思わぬ機能不足に陥る恐れも考えられます。

ボトムアップ法

ボトムアップ法は、システムと構成要素を1つひとつ想定し、それぞれの費用を計上する手法です。作業をすべて見積もるため、抜け漏れは発生しにくいでしょう。一方で、見積もりに時間がかかりやすいという難点があります。

エンジニアリング費用を見直すには

エンジニアリングの費用が想定以上だった場合、どこを見直すべきでしょうか。

まず、パッケージやASP、ツールを活用できないか検討しましょう。そのためには、要件定義が明確になっている必要があります。

人件費が高い場合、派遣エンジニアを活用する方法もあります。派遣なら、業務委託ではできないエンジニアへの直接指示が可能になり、管理を内製化できます。管理費を節約でき、全体の費用削減に貢献できるケースもあるでしょう。

まとめ

エンジニアリングの費用は、単価と工数で決まります。また、実働費用以外にも管理費や実費など、諸経費が計上される場合もあります。提示された費用は、見積もりの算出方法や加味される経費によって異なり、妥当性を判断するのは容易ではないでしょう。

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