同一労働同一賃金に対応した賞与の扱いとは?違反時のリスク、適合性を確認する手順も解説

同一労働同一賃金とは、公平な賃金や待遇を労働者に提供するための仕組みのことです。契約内容や雇用形態に捉われず、業務内容が同じ労働者に対して同様の賃金を支払うべき、という考え方を指します。本記事では、同一労働同一賃金における賞与の扱い、違反した場合のリスクなどについて解説します。企業担当者の方はぜひ参考にしてください。

同一労働同一賃金とは?

同一労働同一賃金とは、同一企業や団体における正社員雇用の労働者と、非正社員雇用の労働者との間に不合理な待遇差が生じることを禁止する制度です。労働環境の改善、賃金格差の是正を行い、労働市場の公正性を高める目的で導入されました。

従来、同一労働同一賃金は努力義務とされていました。しかし、法改正が行われ、2023年現在はすべての企業に同一労働同一賃金を遵守することが義務付けられています。

同一労働同一賃金における賞与の扱いとは?

同一労働同一賃金を導入した場合、賞与の扱いを変更する必要があります。労働者の雇用形態をもとに賞与を決めるのではなく、業務内容などをもとに貢献に応じて支給します。

同一労働同一賃金の均衡待遇・均等待遇

正社員雇用の労働者と非正社員雇用の労働者の不合理な待遇差を解消させるためには、均衡待遇と均等待遇の条件を満たす必要があるとされています。均衡待遇とは、労働者の職務内容、職務内容・配置の変更範囲、その他の事情を考慮したうえで不合理な待遇差を禁止することを指します(パートタイム・有期雇用労働法 第8条)。

一方で、均等待遇とは職務内容や職務内容・配置の変更範囲が同じ場合、基本給や賞与などの待遇について差別的な取り扱いすることを禁ずるものです(パートタイム・有期雇用労働法 第9条)。

※参考:同一労働同一賃金について|厚生労働省

「貢献に応じた支給」が必要

厚生労働省の「同一労働同一賃金ガイドライン」では、「ボーナス(賞与)であって、会社の業績等への労働者の貢献に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない」と示されています。

※引用:同一労働同一賃金ガイドライン|厚生労働省

したがって、企業が賞与を支給する際は、労働者による業績などへの貢献をもとに金額を決定する必要があります。同じ貢献には同じ賞与、違いがある場合は違いに応じた賞与を支給しなければなりません。

同一労働同一賃金を踏まえた就業規則の2つのポイント

賞与の支払いに関する内容を就業規則に記載している場合は、同一労働同一賃金の導入にあたって、内容変更が必要になる可能性があります。就業規則における2つのポイントを確認しましょう。

賞与の支払いは就業規則に記載する必要がない

前提として、賞与の支払いは就業規則において相対的必要記載事項に分類されます。このため、就業規則に賞与の支払いについて必ず明記する必要はありません。

なお、就業規則の相対的必要記載事項としては、次のようなものがあります。

  • 退職手当に関する事項
  • 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関する事項
  • 食費、作業用品などの負担に関する事項
  • 安全衛生に関する事項
  • 職業訓練に関する事項
  • 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項
  • 表彰、制裁に関する事項
  • その他全労働者に適用される事項

ただし、企業が労働者と個別に労働契約書で賞与の取り決めを設けている場合、慣例で賞与支給をしている場合などは、就業規則における同一労働同一賃金の対応が必要になるので注意してください。

※参考:就業規則を作成しましょう|厚生労働省

労働者の職務に応じて賞与を支給しなければならない

同一労働同一賃金では、雇用形態に限らず、労働者の職務に応じて、賞与を支給しなければなりません。このため、就業規則に「非正社員雇用の労働者に賞与を支給しない」と記載している場合は、同一労働同一賃金に違反する恐れがあるため注意が必要です。

原則、就業規則は全従業員を対象にしたものであるため、「非正社員雇用の労働者に賞与を支給しない」といった表現は待遇差があると考えられる可能性があります。

正社員雇用の労働者と非正社員雇用の労働者の職務内容が違う場合は、就業規則を分けて作成するようにしましょう。

同一労働同一賃金の罰則に違反した場合のリスク

2023年現在、企業が同一労働同一賃金に違反した場合でも、罰金や科料が科されることはありません。ただし、企業として2つのリスクを負う恐れがあります。

優秀人材が流出する可能性がある

同一労働同一賃金を守らないと、労働者が企業の対応に不満を持つ可能性があります。その労働者が転職活動をし、他社に流れてしまう恐れもあるでしょう。優秀な人材が自社に残らず、流出してしまうと業績悪化などにつながるため、避けなければなりません。

同一労働同一賃金への対応を含め、企業として人材が定着するように働きかける必要があります。

不合理な待遇差による訴訟の可能性がある

不合理な待遇差がいつまでも改善されないと、そのことを不満に感じた労働者が増え、訴訟を起こされるケースもあるでしょう。裁判に発展すれば、対外的な企業イメージまでも低下するリスクがあります。

企業イメージが下がったことが原因で、銀行からの融資を受けにくくなったり、金利が優遇されなくなったりする場合も考えられます。また、人材の採用が難しくなる可能性があるため、大きなトラブルに発展する前に企業として適切な対応をとる必要があるでしょう。

同一労働同一賃金への適合性を確認する手順

同一労働同一賃金を導入する場合、自社の適合性を確認します。ここで、確認手順を解説します。

1.労働者の雇用形態を確認する

まずは、同一労働同一賃金の対象となる労働者の有無を確認し、対象者の雇用形態をチェックしましょう。社内に契約社員やパート社員、嘱託社員がいるかを確認します。

2.待遇の状況を確認する

次に、対象者の賃金や福利厚生などの待遇について、正社員と取り扱いの違いがあるかを確認します。賞与や退職金、各種手当などの計算方法や支給額の状況をチェックしてみましょう。

3.待遇差がある場合、違いを設けている理由を確認する

待遇の状況を確認した結果、待遇差があった場合はその理由を確認します。待遇差を合理的に説明できるかどうかを検証しましょう。待遇差が働き方や役割の違いに見合ったものであるか確認する必要があります。

4.就業規則・賃金規程を見直す

待遇差の解消と並行して、就業規則や賃金規程の見直しを行います。契約社員やパート社員、嘱託社員などにおける、正社員雇用の機会制度を検討してもいいでしょう。

5.労使間での話し合いの機会を設ける

最後に、労働者の意見を聞きながら、契約社員やパート社員、嘱託社員の待遇に関する話し合いの機会を設けます。改善する必要がある場合は、計画的に取り組むことが大切です。

まとめ

同一労働同一賃金とは、公平な賃金や待遇を労働者に提供するための仕組みで、業務内容が同じ労働者に対して同様の賃金を支払うべきという考え方です。就業規則に必ず記載する必要はなく、違反した場合に罰則を受けることもありません。ただし、優秀な人材が流出したり、不合理な待遇差が原因で訴訟を起こされたりするリスクがあります。

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