ラボ型オフショア開発のメリット・デメリット|成功させるためのポイントも解説
オフショア開発とは、海外にシステム開発、インフラ構築、運用保守、ソフトウェア設計などの業務を委託することです。人材不足や人件費削減を目的として、オフショア開発を活用する企業は多くあります。そのようなオフショア開発の1つが「ラボ型開発」です。本記事では、近年注目されているラボ型開発のメリット・デメリットや、おすすめのケースなどを解説します。
Contents
ラボ型のオフショア開発とは?
まずは、ラボ型のオフショア開発の概要から解説します。
そもそもラボ型開発とは?
ラボ型開発とは、社外に自社専属のエンジニアチームを編成する開発形態です。一般的には中長期(半年から1年程度)の契約を結び、その間エンジニアチームには自社の開発に専念してもらいます。案件単位ではなく、期間で契約を結ぶ点も特徴的です。
国内型・海外型の2パターンがある
ラボ型開発は、海外で行われるケースが一般的なので、オフショア開発の1つと捉えられています。オフショア開発とは、主にコスト削減を目的として人件費の低い海外に開発を委託する方法です。つまり、多くのラボ型開発は、海外に自社専用の開発体制を構築する方法と考えられるでしょう。
しかし、広義のラボ型開発には、国内開発も含まれます。実際に、日本にもラボ型開発を請け負う企業は多くあるため、一概に「ラボ型開発=オフショア開発」とは断言できません。
ラボ型開発と請負型開発の違い
契約形態 | 契約期間 | 責任範囲 | 開発モデル | |
ラボ型開発 | 準委任契約 | 中長期 | 業務の遂行に対して責任が生じる(成果物の納品義務はなし) | 受注側と発注側が相談しながら決める |
請負型開発 | 請負契約 | 短期間も多い | 成果物の納品に対して責任が生じる | 受注側が決める |
システム開発を外部に委託する方法としては、ラボ型開発だけでなく「請負型開発」という形態もあります。
ラボ型開発は準委任契約なのに対し、請負型開発は請負契約という契約形態です。準委任契約には成果物に対する責任は含まれませんが、請負契約では受注側に成果物を納品する義務が生じます。
ラボ型開発が「一定期間、自社専属のエンジニアチームを確保できる契約」なのに対し、請負型開発は「成果物を確実に受け取ることができる契約」といえるでしょう。
また、ラボ型開発は半年から1年などの中長期の契約を結ぶケースが多いのに対し、請負型開発の契約期間は成果物の納期により異なるため、比較的短期の契約も少なくありません。さらに、ラボ型開発では開発モデルは発注者と相談しながら決定しますが、請負型契約では開発者が決めるという違いもあります。
ラボ型のオフショア開発のメリット
ラボ型のオフショア開発には、次のようなメリットを期待できます。
エンジニアを一定期間確保できる
ラボ型のオフショア開発では、自社専属のエンジニアチームを構築するため、契約期間中は自社の開発業務に集中してもらえます。そのため、リソースの兼ね合いで開発に携わるメンバーが入れ替わるということがなく、優秀なエンジニアを長期間確保することが可能です。契約期間中は優秀なエンジニアを抱え込めるので、発注のたびにエンジニアの質にバラつきが生じることがありません。とくに、リーダークラス以上のエンジニアを確保できる点は大きなメリットといえるでしょう。
ノウハウや知見が蓄積されやすい
一定期間、優秀なエンジニアチームを自社チームのように使用できるので、ノウハウや知見が蓄積されやすいというメリットもあります。海外の優秀なエンジニアと共同でプロジェクトを進めることにより、自社のエンジニアやチームにもプラスの影響を期待できるでしょう。
人件費を抑えやすい
委託先によっては、人件費を削減することも可能です。自国より人件費が安い国に業務を委託すれば、国内の人材を使用する場合と比べてコストカットを実現しやすくなります。
臨機応変な対応ができる
ラボ型のオフショア開発は成果物に対する契約ではないため、途中で仕様変更があっても臨機応変な対応が可能です。仕様変更や機能追加のたび、見積もりをし直す必要がなく、契約期間中であればエンジニアチームを柔軟に動かせます。
機密性を高められる
委託先によっては、自社が依頼したチーム専用の開発ルームを設ける場合もあります。機密性の高い開発環境を構築できれば、情報漏洩の防止にもつながるでしょう。
チームワークを高めやすい
契約期間中は同じメンバーが開発にあたるため、チーム内のコミュニケーションを深めやすい傾向があります。チームワークが高まれば開発スピードや品質も向上するため、発注側にとっても大きなメリットです。
また、中長期的に案件をこなすなかで、発注側と受注側のコミュニケーションも円滑になり、円滑に話が進むでしょう。その結果、発注元を含めた、開発チーム全体のチームワークの向上にも期待できます。
ラボ型のオフショア開発のデメリット
ラボ型のオフショア開発には多くのメリットを期待できますが、次のようなデメリットも存在します。
チームの立ち上げに時間がかかる
ラボ型のオフショア開発では一定期間、固定のメンバーに開発を任せることになるため、チームを慎重に編成する必要があります。また、メンバーが決まったあとも、指示系統を確立したり、開発プロセスやノウハウを伝えたりといった準備が必要なため、チームの立ち上げにはそれなりの時間を要するでしょう。
発注件数が少ないと費用対効果が低下する
ラボ型開発は成果物ではなく期間を定める契約なので、案件数が少なくても費用は据え置きです。発注件数が1件でも5件でもかかる費用は同じなので、発注件数が少ないほど費用対効果は低下してしまいます。
マネジメントが担う役割が大きい
請負型開発では、仕様さえ決まれば開発はある程度一任できますが、ラボ型開発では自社開発と同じ程度のマネジメントを求められます。また、マネジメントにおいて、言葉の壁がネックになる可能性も考慮しておくべきでしょう。
ラボ型のオフショア開発がおすすめなケース
ここからは、ラボ型のオフショア開発がおすすめなケースについて解説します。
定期的に案件が発生する
定期的に案件が発生するケースでも、ラボ型開発なら案件ごとにプロジェクトを組み直す必要がありません。契約期間中なら同じチームに継続的に依頼できるので、発注側の負担が少なく済むでしょう。
サービスやアプリを素早くリリースした
ラボ型開発は、はじめは要件や仕様をおおまかに決定し、開発を進めていくなかで改善と改修を繰り返す「アジャイル開発」にも適しています。
アジャイル開発では小さな単位で開発を積み重ねるので、契約期間中はエンジニアチームを柔軟に動かせるラボ型開発との相性がよいといえるでしょう。また、サービスやアプリを素早くリリースしたい場合にも向いています。
仕様が変更になる可能性が高い
ラボ型開発なら、契約期間中であれば仕様変更にも追加費用は発生しません。そのため、仕様変更が予想されるケースにも適しているといえます。
既存サービスやアプリのメンテナンスを委託したい
同じ開発チームに継続依頼できるラボ型のオフショア開発は、定期的な改善・改修が必要なケースにも適しています。そのため、既存サービスやアプリのメンテナンスとも相性がよいでしょう。これまで自社でメンテナンスに対応していた場合は、ラボ型開発を取り入れることで担当者の負担軽減につながる可能性があります。
ラボ型のオフショア開発を成功させるポイント
ラボ型のオフショア開発を成功させるためには、次のポイントを押さえることが重要です。
開発会社の選定は慎重に
一定期間、固定のチームに開発を依頼することになるので、依頼先の選定は重要です。これまでの実績を確認し、自社のプロジェクトに合う開発会社を選びましょう。円滑なコミュニケーションのために必要な言語を話せる担当者はいるか、日本企業との開発実績はどの程度あるかといった点もチェックしたいポイントです。まずはお試しとして請負契約で開発を発注し、その後ラボ型開発に移行するケースも多いでしょう。
コミュニケーションルートを確立する
オフショア開発は言葉の壁や文化の違いの問題もあるため、コミュニケーションがとくに重要です。指示系統を明確化し、ミーティングやフィードバックの頻度についても決めておくとよいでしょう。
自社を含めたチームビルディングを行う
ラボ型のオフショア開発は単純な外注というよりも、自社のチームを外部に持つような形に近いといえます。自社開発と同様のマネジメントが必要なこともあり、自社と発注先を含めたチームビルディングを行うことが成功のカギです。
ラボ型のオフショア開発に関するよくある疑問
ここからは、ラボ型のオフショア開発に関するよくある疑問に答えていきます。
チームメンバーの変更は可能?
メンバーの変更や増員に対応するかどうかは開発会社によって異なるため、あらかじめ規定を確認しておくと安心です。中小規模の開発会社と比べると、大規模な開発会社は比較的柔軟に対応してくれる傾向があるでしょう。
発注先と日本語でのコミュニケーションは可能?
「日本語対応可能」と銘打っているオフショア企業は少なくありませんが、実際の日本語のレベルは千差万別です。保有する資格や、実際に会話したときの印象などから、日本語のレベルを事前にチェックしておくとよいでしょう。
まとめ
ラボ型のオフショア開発を活用すれば、海外の優秀なエンジニアを一定期間確保することが可能です。外部に自社専属のエンジニアチームを構築できるため、臨機応変な対応がしやすいほか、ノウハウや知見が蓄積されやすいというメリットもあります。国内より人件費が安い国に発注すればコストカットにもつながるため、IT人材の確保に苦戦している場合は、ぜひ検討してみましょう。
なお、日本よりバイリンガルエンジニアの賃金が高い国に拠点を構えている場合は、海外から日本にオフショアすることで、人件費を抑えるという手段もあります。
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