特定派遣や現行の派遣型での労働者の引き抜きは問題ない?メリットやデメリットを解説

派遣労働者を引き抜くことは違法ではありません。この記事では、引き抜きの概要やメリット、デメリットなどについて解説します。派遣労働者の引き抜きを検討している人は参考にしてみてください。

特定派遣とは

特定派遣とは、派遣会社の正社員として常時雇用の契約を締結し、労働力を必要とする派遣先に派遣される形態を指す言葉です。契約を結んだ後、労働者は派遣先で派遣労働者として業務を行います。

特定派遣は、IT業界においてはエンジニアなどの専門職に適用されることが多かった形態です。

特定派遣は2015年に廃止されている

特定派遣は、労働者派遣事業制度の見直しが行われたことによって、2015年9月30日に廃止されました。

廃止になった背景としては、特定派遣が雇用の安定につながらなかったことが挙げられます。特定派遣の常時雇用のルールを守らず、数か月など短い期間で労働者を有期雇用とする悪質な事例もあったとされています。

引き抜きとは

引き抜きとは、在籍企業や組織から優秀な人材を引き離して自社で採用する手法のことです。派遣労働者は、派遣先の企業から引き抜きの話を受けることもあります。もし派遣先からの引き抜きに応じた場合は、派遣会社との契約ではなく、正社員として直接雇用されることになります。

ヘッドハンティングとの違い

引き抜きと似た意味を持つ言葉に、ヘッドハンティングがあります。ヘッドハンティングとは、事業運営に欠かせない優秀な人材を他社からスカウトする採用手法のことです。

ヘッドハンティングと引き抜きの違いは、人材にアプローチをする過程において「仲介業者が入るかどうか」です。ヘッドハンティングは、仲介業者がターゲットとする人材の選定まで担当してくれるため、自社のニーズに合う人材を見つけやすいでしょう。

特定派遣でも現行の派遣型でも引き抜きは違法ではない

特定派遣と現行の派遣型、いずれにおいても派遣労働者の引き抜きは違法ではありません。特定派遣においても現行の派遣型(登録型・紹介予定型・常用型)においても職業選択の自由が認められています。

労働者派遣法第33条では、派遣契約の終了後は、派遣労働者が派遣先企業との雇用契約の締結を禁じることはできないと定められています。

【労働者派遣法第33条】
1.派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者との間で、正当な理由がなく、その者に係る派遣先である者(派遣先であった者を含む。次項において同じ。)又は派遣先となることとなる者に当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはならない。

2.派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者に係る派遣先である者又は派遣先となろうとする者との間で、正当な理由がなく、その者が当該派遣労働者を当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用することを禁ずる旨の契約を締結してはならない。

※引用:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)|e-GOV 法令検索

引き抜きの際には手数料を支払うことも

引き抜きを行う際には、派遣会社から「直接雇用をするなら紹介手数料を払ってほしい」といわれることもあります。引き抜きが行われると、派遣会社に入金される手数料が減ってしまうためです。

手数料の相場

紹介手数料の相場は、派遣労働者の見込み年収の20〜30%といわれています。

【計算例】
派遣労働者の見込み年収が500万円の場合
手数料率20%の場合:500万円×0.2=100万円
手数料率30%の場合:500万円×0.3=150万円

また、派遣契約期間中に派遣労働者を引き抜く場合は、紹介予定派遣へ切り替えなければならないこともあります。

引き抜きのメリット

ここでは、引き抜きのメリットを各々の立場に応じて解説します。

派遣先の会社

引き抜きにおける派遣先の会社のメリットは、以下のとおりです。

  • 業務内容を理解している人を雇用できる
  • 定期的な紹介手数料を払わなくてよくなる

派遣労働者はすでに業務内容を理解しているため、即戦力として活躍できます。新たに従業員を採用するよりも教育にかける時間とコストを大幅に削減できるでしょう。

また、派遣労働者を直接雇用することで、派遣会社に支払う定期的な紹介手数料も不要となります。

派遣会社

引き抜きにおける派遣会社のメリットは、以下のとおりです。

  • 派遣労働者の雇用安定をサポートできる
  • 紹介手数料を得られる

派遣労働者が引き抜かれて直接雇用されることで、その労働者の雇用が安定します。また、派遣労働者が引き抜かれる際に、派遣会社は紹介手数料を得られるケースがあります。

しかし、派遣先の会社と比較すると、派遣会社のメリットはそれほど多くないでしょう。

派遣労働者

引き抜きにおける派遣労働者のメリットは、以下のとおりです。

  • 派遣先企業の福利厚生を受けられる
  • 収入が安定しやすい

直接雇用されることで、派遣先企業の福利厚生を受けられるようになります。派遣先企業が充実した福利厚生を提供している場合は、大きなメリットになるでしょう。また、正社員として雇用されるため、収入が安定し、昇給の可能性も高まります。

引き抜きのデメリット

ここでは、引き抜きのデメリットを各々の立場に応じて解説します。

派遣先の会社

引き抜きにおける派遣先の会社のデメリットは、以下のとおりです。

  • 紹介手数料を支払わなければならない場合がある
  • 福利厚生費を負担しなければならない

派遣労働者を引き抜く際には、派遣会社に対して、見込み年収の20〜30%程度の紹介手数料を支払う必要が出てくるケースがあります。また、引き抜いた労働者を正社員として雇用する場合、新たに福利厚生費用を負担しなければなりません。

派遣会社

引き抜きにおける派遣会社のデメリットは、以下のとおりです。

  • 人材を手放すことになる
  • 定期的な収益が失われる

引き抜きが行われると、派遣会社は貴重な人材を失うことになります。引き抜かれた労働者の派遣契約が終了するため、派遣会社は定期的な紹介手数料を1人分得られなくなります。

派遣労働者

引き抜きにおける派遣労働者のデメリットは、以下のとおりです。

  • 必ずしも正社員とは限らない
  • 責任が増える

引き抜かれたとしても、必ずしも正社員として雇用されるわけではありません。契約社員などの形態で雇用される可能性もあります。

また、正社員として雇用されると、派遣労働者として働くよりも責任が増えることもあるでしょう。業務範囲が広がり、求められるスキルや成果も高くなる可能性があります。

派遣労働者を引き抜く際の注意点

ここでは、派遣労働者を引き抜く際の注意点について解説します。

派遣会社に引き抜きの意思を伝える

あらかじめ派遣会社に対して引き抜きの意思を伝えるようにしましょう。直接雇用を打診したい旨を派遣会社に伝えることで、円滑に引き抜きを進められる可能性が高まります。

また、何も伝えずに引き抜きをすることで、トラブルに発展する恐れもあります。引き抜きを行う際には、派遣会社に対しても誠実に対応をすることが重要です。

契約期間満了後に雇用する

引き抜きは、契約期間満了後のタイミングで行いましょう。

派遣契約期間の終了後に派遣労働者の雇用をすると、派遣会社とのトラブルを避けやすくなるためです。もし契約期間中に引き抜きを行うと、派遣会社に対して紹介手数料を支払う・支払わないなどで揉める恐れがあります。

労働条件や業務内容を書面で伝える

引き抜いた労働者には、雇用条件や業務内容を書面で伝えましょう。書面で伝えることで、双方の認識の齟齬が起こりにくくなります。

もし雇用条件を書面で伝えない場合には、引き抜きに応じて大丈夫なのかどうかを労働者から警戒される恐れもあります。

まとめ

以前に派遣の制度として設けられていた特定派遣において、引き抜きは問題ない行為でした。これは、現行の派遣型(登録型・紹介予定型・常用型)においても同様です。引き抜きは、派遣会社・派遣労働者と十分に話し合いのうえで実施しましょう。

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