特定派遣とは?労働者派遣法の改正で廃止された理由、廃止の影響、一般派遣との違いも解説

特定派遣とは、派遣元と労働者が常時雇用として雇用契約を結ぶ契約形態です。特定派遣はIT企業への派遣で主流の雇用形態でした。しかし、現在では特定派遣は廃止されています。この記事では、特定派遣と一般派遣との違いや労働者派遣法の改正内容、特定派遣が廃止された背景などを解説します。

特定派遣とは

特定派遣とは、派遣元と労働者が無期限の雇用契約を結ぶ契約形態です。派遣先がない期間であっても、派遣元は労働者を雇用していることになるため給与が発生します。特定派遣は主に、専門性の高い業務で多く採用されていました。しかし、2015年の労働者派遣法改正で特定派遣は廃止されています。

専門性が高い「26業務」とは

特定派遣は、厚生労働省が定める「26業務」が対象となっていました。詳細は以下の通りです。

  • 1号:ソフトウェア開発
  • 2号:機械設計
  • 3号:放送機器等操作
  • 4号:放送番組等演出
  • 5号:事務用機器操作
  • 6号:通訳、翻訳、速記
  • 7号:秘書
  • 8号:ファイリング
  • 9号:調査
  • 10号:財務処理
  • 11号:取引文書作成
  • 12号:デモンストレーション
  • 13号:添乗
  • 14号:建築物清掃
  • 15号:建築設備運転、点検、整備
  • 16号:案内・受付、駐車場管理等
  • 17号:研究開発
  • 18号:事業の実施体制の企画、立案
  • 19号:書類等の制作・編集
  • 20号:広告デザイン
  • 21号:インテリアコーディネーター
  • 22号:アナウンサー
  • 23号:OAインストラクション
  • 24号:テレマーケティングの営業
  • 25号:セールスエンジニアの営業、金融商品の営業
  • 26号:放送番組等における大道具・小道具

※参考:政令で定める26業務|厚生労働省

特定派遣と一般派遣の違いとは

派遣には、特定派遣と一般派遣の2種類がありました。2015年の派遣法改正によって特定派遣は廃止され、派遣事業は「労働者派遣事業」に一本化されています。現在では特定派遣を導入することはできませんが、両者にはどのような違いがあったのでしょうか。ここでは、職種・雇用形態・運営方法に分けて、特定派遣と一般派遣の違いを解説します。

職種

まずは、対象となる職種が異なります。特定派遣は前述した通り、専門性が高いと認められた「26業務」が対象となっていました。一方、一般派遣の対象は多岐にわたります。特定派遣の対象とされていた26業務以外の業務に対応していることが特徴で、専門性やスキルなどが問われない場合もあります。

雇用形態

特定派遣は常用雇用です。常用雇用とは、派遣元と労働者が雇用関係を無期限で結ぶ雇用形態を指します。派遣先での業務が終了した後も、派遣元の会社との雇用関係が続くことが特徴であり、派遣先が決まっていない場合も給与が発生します。

一方、一般派遣は登録制です。派遣先が決まった時点で派遣元と雇用契約を結び、派遣先での業務が終了すると派遣元との雇用契約も終了します。そのため、派遣先が決まっていない状態だと給与は発生しません。

運営方法

特定派遣は届出制で、厚生労働省の届け出のみで派遣事業を行えるという特徴がありました、届け出は必要である一方で許可は不要のため、参入のハードルが低かったといえます。一方、一般派遣は許可制です。厚生労働省の許可が必要となり、許可を得るためには所定の条件を満たさなければならないため参入ハードルは高めです。

労働者派遣法とは

労働者派遣法とは、1986年に制定された法律です。労働者派遣法は通称であり、正式には「労働者派遣事業の適正な采井の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」といいます。労働者派遣法は派遣社員の権利を守ることと、派遣事業の適切な運営を促すという目的で制定されました。施行以降、何度も改正が繰り返されています。

労働者派遣法の改正内容とは

前述したように、労働者派遣法は何度も改正されています。ここでは、労働者派遣法の改正内容を解説します。

特定派遣の廃止

2015年の改正によって、特定派遣が廃止されました。従来は、一般派遣と特定派遣の2種類に分けられていましたが一本化され、許可制の「労働者派遣事業」となっています。派遣事業を行う際には必ず許可を得る必要があり、無許可で派遣事業を行った場合には指導の対象となるほか、罰則が科せられる場合もあります。

「3年ルール」の変更

改正される以前は、一般派遣の雇用期間の上限は3年、専門性の高い26業務には雇用期間の制限がありませんでした。しかし改正によってこれらの区分は廃止され、業務にかかわらず制限が設けられるようになっています。業務に関係なく雇用期間の上限は3年となっていますが、60歳以上や有期プロジェクトなどの派遣労働者は例外です。

キャリアアップ措置の義務化

改正により、派遣元の会社は派遣労働者のキャリアアップを図ることが義務化されました。キャリア形成を考えて、段階的かつ体系的な教育訓練を実施することとなっています。また、希望者に対してキャリア・コンサルティングを実施しなければなりません。これらの訓練やコンサルティングは有給、かつ無償で行われることと定められています。

待遇の均衡化を推進

正社員と派遣労働者が同じ業務に従事する場合、待遇に差が生じない措置を推進することも法改正により義務化されました。たとえば、職務や教育、成果、福利厚生などの待遇に不合理な差が生じないように配慮しなければなりません。待遇の均衡化推進は、派遣元だけでなく派遣先の会社にも配慮義務があります。

特定派遣が廃止された理由とは

IT業界などでよく採用されていた特定派遣ですが、なぜ廃止されたのでしょうか。ここでは、特定派遣が廃止された理由を解説します。

雇用が安定しなかった

特定派遣は、雇用期間の定めがない常時雇用のため安定した雇用が期待されたものの、実際には短期雇用を繰り返すといった事態が発生しました。また、派遣元の会社の正社員ではなく、契約社員として雇用するケースも多くあったようです。派遣労働者の立場をより不安定にする事態が多く起こったことは、特定派遣廃止の大きな理由です。

給与未払いや解雇が発生した

前述したように、特定派遣は厚生労働省への届け出のみで事業が行えたため、事業開始のハードルが低くなっていました。資金が乏しい会社でも参入しやすかったため、さまざまな会社が参入しました。結果として、事業がうまくいかずに給料未払いや解雇などが増えてしまったことも、特定派遣廃止の要因です。

特定派遣の廃止がもたらした影響とは

特定派遣の廃止によってどのような影響があったのでしょうか。ここでは、特定派遣廃止の影響を解説します。

派遣事業が継続できない会社もあった

届け出のみで始められる特定派遣が廃止され、労働派遣事業として一本化されたことにより派遣事業を行う際には、労働局に申請のうえ許可をもらう許可制に変更されました。許可をもらうには多くの要件や基準を満たす必要があります。これらの基準を満たせず、派遣事業から撤退した会社も少なくありません。

労働派遣事業の許可基準

労働派遣事業の許可基準は以下の通りです。

  • 代表者や役員などが刑事罰を受けていないこと
  • 認可基準:特定の企業への派遣ではない、適切な雇用管理をすること
  • 資産要件:1事務所につき基準資産が2,000万円以上
  • 事務所要件:面積が20㎡以上、風俗営業の密集地でないなど
  • 派遣元責任者の選任:派遣元労働者100名につき1名選任

このように、欠格事由や資産要件などが定められており、条件を満たしていなければ許可が得られません。

偽装請負が増えた

特定派遣の廃止により、偽装請負が増加しました。偽装請負とは、派遣先と請負業者の間で契約を結び、派遣先が労働者に対して仕事の指揮をとるものです。偽装請負の場合には、残業代が支払われない、健康保険や厚生年金保険などの社会保険への未加入など、労働者の待遇が守られないケースも多く問題となっています。

特定派遣の廃止でIT企業が受けた影響とは

IT企業では、特定派遣による人材確保が多く行われていたため、特定派遣廃止によって大きな影響を受けています。まず、特定派遣の廃止によって派遣会社が淘汰されたため、エンジニアの確保が難しくなりました。また、準委任契約や請負契約といった契約形態が増えましたが、それに伴い偽装請負のリスクも高まったといえます。

まとめ

特定派遣とは、派遣元と労働者が無期限の雇用契約を結ぶ雇用形態で、IT企業などで多く採用されていました。しかし、派遣労働者の不安定な立場を解消するため、2015年の法改正により特定派遣は廃止されています。偽装請負のリスクもあるため、労働者派遣法を理解しながら派遣サービスを活用しましょう。

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