派遣から正社員に引き抜きすることは問題ない?メリットやデメリットについて解説

派遣労働者を活用している際、優秀な人材であれば正社員として採用したくなることもあるでしょう。当記事では、引き抜きの概要やメリット、デメリットなどについて解説します。自社で採用したい派遣労働者がいる人は参考にしてみてください。

引き抜きとは

引き抜きとは、在籍企業や組織から優秀な人材を引き離して自社に採用する手法のことです。派遣労働者の視点では、派遣として仕事をしている際に「自社で働かないか」との誘いを受けることになります。引き抜きを行った場合、派遣労働者は派遣会社との契約ではなく、引き抜き先の会社に正社員として直接雇用されます。

引き抜きとヘッドハンティングの違い

引き抜きと似た意味合いの言葉に、ヘッドハンティングがあります。ヘッドハンティングとは、自社の事業に必要な人材を他社からスカウトする採用手法のことです。

ヘッドハンティングは、人材のスカウトにあたって仲介業者が間に入ります。この点が引き抜きとの大きな違いといえるでしょう。また、ヘッドハンティングは管理職に就いているなど一定以上の経験を持っている人を対象としている点も特徴です。

派遣から正社員に引き抜きすることは法律上問題ない

結論から伝えると、派遣労働者の引き抜きは違法ではありません。

労働者派遣法第33条では「派遣契約終了後に派遣労働者が派遣先企業と結ぶ雇用契約は禁じられない」と定められています。また、派遣労働者には職業選択の自由が認められています。つまり、引き抜きによって派遣労働者を正社員として雇用することに法的な問題はありません。

【労働者派遣法第33条】
派遣元事業主は、その雇用する派遣労働者又は派遣労働者として雇用しようとする労働者との間で、正当な理由がなく、その者に係る派遣先である者(派遣先であつた者を含む。次項において同じ。)又は派遣先となることとなる者に当該派遣元事業主との雇用関係の終了後雇用されることを禁ずる旨の契約を締結してはならない。

※引用:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和六十年法律第八十八号)|e-GOV

手数料を支払う場合がある

法的な問題はないものの、引き抜きを行うと派遣会社が「直接雇用をするなら紹介手数料を払ってほしい」と要望を出してくることがあります。この紹介手数料の相場は、派遣労働者の見込み年収の20〜30%といわれています。

また、派遣契約期間中に派遣労働者を引き抜く場合は、紹介予定派遣へ切り替えなければならないケースがある点も押さえておきましょう。

派遣を直接雇用に切り替える方法

ここでは、派遣を直接雇用に切り替える方法について解説します。

紹介予定派遣

派遣労働者を直接雇用に切り替える方法の1つは紹介予定派遣です。

紹介予定派遣とは、派遣先企業との将来的な直接雇用を前提とした働き方です。派遣労働者はまず派遣会社と雇用契約を結び、最大6か月間派遣先企業で派遣社員として勤務します。その後、派遣先企業と派遣社員の双方が合意すれば直接雇用に切り替えられます。

紹介予定派遣は直接雇用を前提としているため、通常の派遣契約と異なり就業前の書類選考や面接などの機会が設けられるケースがある点が特徴です。

無期雇用派遣

派遣労働者を直接雇用に切り替える方法の1つは、無期雇用派遣です。

無期雇用派遣とは、派遣労働者が期間の定めがない雇用契約を派遣会社と締結し、企業へ派遣されて就労する働き方です。派遣先がない場合でも派遣会社との雇用契約は続いているため、派遣労働者は給与などを受け取れます。この場合の雇用先は、あくまでも派遣会社である点に注意してください。

派遣労働者の視点では、派遣会社の業務命令として働くため、以下の点に関する希望が通りにくくなります。

  • 業務内容
  • 勤務地
  • 勤務時間

など

派遣を引き抜くメリット

ここでは、派遣を引き抜くメリットについて解説します。

任せられる業務の幅が広がる

派遣を引き抜くメリットは、任せられる業務の幅が広がる点です。

派遣契約では、契約した業務以外の依頼が制限されています。しかし、直接雇用すれば、派遣労働者が持っているスキルや経験値を最大限に発揮させられるでしょう。結果的に、人材資源を効果的に活用できます。

コストを抑えられる

派遣を引き抜くメリットは、さまざまなコストを抑えられる点です。

人材採用を進める際には、求人票や企業の宣伝、面接、採用試験などの業務を行わなければならず、結果的に人件費などがかかります。しかし、派遣労働者を派遣契約終了後に直接雇用すれば、採用に関わるコストが抑えられます。

また、派遣会社に対して定期的な紹介手数料も払わなくてよくなる点もメリットでしょう。

派遣を引き抜くデメリット

派遣の引き抜きはメリットだけではありません。派遣を引き抜くデメリットについて解説します。メリットとともに把握しておきましょう。

働き方に悩む人が出てくる可能性がある

派遣を引き抜くデメリットは、雇用後に働き方に悩む人が現れる可能性がある点です。

派遣労働者は直接雇用されることで、雇用の安定や給与の増額などが見込めるでしょう。その反面、派遣労働者であるメリットを生かしてプライベート優先の働き方をしていた場合は、責任の増加など環境の変化に戸惑う恐れもあります。そのため、雇用後には状況に応じてメンタル面のサポートが必要です。

労務管理のコストが増える

派遣を引き抜くデメリットは、労務管理のコストが増える点です。正社員としての採用をする場合には、福利厚生や社会保険料の負担などの金銭的コストに加え、労務管理にかける実務面のコストが増えます。

引き抜きを検討する際には、直接契約と派遣契約のコストを比較してから決断することをおすすめします。

直接雇用を促進するための義務

ここでは、厚生労働省が定めている、派遣労働者の直接雇用を促進するための義務について解説します。主に派遣会社に対して課される義務ですが、引き抜きを検討する際にはこの点も把握しておきましょう。

キャリアアップ措置の実施

直接雇用を促進するための義務としては、キャリアアップ措置の実施が挙げられます。

キャリアアップ措置とは、派遣労働者のためにキャリアに関する教育を施すことです。派遣労働者が業務に従事する際には、本人の希望や適性に沿ったキャリアを歩むための教育が必要とされています。2015年の派遣法改正に伴い、派遣会社には、このキャリアアップ措置の実施が義務付けられました。

雇用努力義務

派遣労働者の直接雇用を促進するために、雇用努力義務が制度として設けられています。雇用努力義務とは、派遣先企業が派遣労働者を直接雇用するよう努める義務のことです。雇用努力義務の要件は、以下のとおりです。

  • 有期雇用の派遣労働者が同一の組織単位の同一業務について、1年以上継続して従事している。
  • 派遣先が派遣の受入れ期間終了後に、引き続き業務に従事させるために労働者を雇用しようとしている
  • 対象となる派遣労働者が継続して就業を希望し、派遣元から直接雇用の依頼があった

ただし、あくまでも努力であるとの点も抑えておきましょう。

雇用安定措置

雇用安定措置とは、派遣期間を終了した派遣労働者に対して雇用を継続させるために講じるべき措置のことです。派遣会社に課される雇用安定措置は、以下のとおりです。

  • 派遣先の企業に派遣労働者の直接雇用を依頼する
  • 派遣労働者に新しい派遣先を提供する
  • 派遣労働者以外の無期雇用労働者としての雇用機会を提供する
  • その他の安定した雇用の継続を図るために必要な措置を取る

引き抜きをする際の注意点

ここでは、引き抜きをする際の注意点について解説します。

派遣会社に引き抜きの意思を伝える

引き抜きをする際には、直接雇用を打診したい旨を派遣会社にあらかじめ伝えましょう。何も伝えずに引き抜きをすると、派遣会社とトラブルになる恐れがあります。引き抜きを行う場合であっても、正しい手順を踏みつつ、誠実に対応をしなければなりません。

契約期間満了後に雇用する

引き抜きをする際には、契約期間満了後に雇用するようにしましょう。これにより、派遣会社との無用なトラブルを避けられます。ベストな雇用タイミングは、派遣労働者の契約更新月です。また、引き抜いた人材には、雇用条件や業務内容を書面で伝え、双方にとって認識の齟齬が起こらないようにしましょう。

まとめ

派遣労働者を正社員として引き抜きする際には、派遣会社とトラブルが起きないよう適性な方法で進めましょう。派遣労働者にとっても雇用の安定化は歓迎すべき事柄であるため、自社に必要な人材であれば積極的に働きかけるのもおすすめです。

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