バリューエンジニアリングとは?概要や身近な事例、実践手順や注意点を解説
ITや製造、建設などの分野で「バリューエンジニアリング」という言葉を聞く機会は多いでしょう。
では、バリューエンジニアリングとはどのようなものを指すのでしょうか。本記事では、バリューエンジニアリングの概要や具体的な事例などを解説します。詳しい実践手順も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
Contents
バリューエンジニアリングとは?
バリューエンジニアリング(VE)とは、製品やサービスを「コスト」と「機能」の両面から改善し、価値を高めることを目的とした組織的努力や手法のことです。さまざまな工夫により、少ないコストで、必要十分な機能を搭載することを目指します。日本語にした場合は「価値工学」を意味する言葉です。
バリューエンジニアリングの定義
公益社団法人日本バリュー・エンジニアリング協会の公式サイトでは、バリューエンジニアリングについて以下のように記載されています。
VE(Value Engineering)とは、製品やサービスの「価値」を、それが果たすべき「機能」とそのためにかける「コスト」との関係で把握し、システム化された手順によって「価値」の向上をはかる手法です。
※引用:VEとは|公益社団法人 日本バリュー・エンジニアリング協会
バリューエンジニアリングとコストダウンの違い
バリューエンジニアリングと混同されがちな言葉に「コストダウン」があります。コストダウンはただ単にコストの削減を目的としているため、それによって機能や品質が下がる可能性を内包しています。一方、バリューエンジニアリングは機能や品質とコストの両立を目指す手法であるため、製品やサービスの価値が低下することはありません。
バリューエンジニアリングの歴史
バリューエンジニアリングは、1947年にアメリカで開発された手法です。もともとは「バリューアナリシス」として発表されましたが、1954年にアメリカ国防省船舶局が導入し「バリューエンジニアリング」として活用したところ、その呼称が広く普及しました。その後、日本では、1960年ごろにバリューエンジニアリングが導入されはじめました。
バリューエンジニアリングにおける「5つの基本原則」
バリューエンジニアリングには、5つの基本原則があります。
1.使用者優先の原則
使用者優先とは、製品やサービスを実際に使用するユーザーにとって必要な価値を優先することです。ユーザーからのフィードバックや要望を収集し、製品やサービスに反映します。
2.機能本位の原則
バリューエンジアリングでは、製品やサービスが果たすべき機能を明確にして、設計や改善を試みます。製品やサービスの本質的な機能にもとづいて、提供する価値や効果の最大化を目指すことが大切です。
3.創造による変更の原則
固定観念にとらわれず、革新的なアイデアや手法を活用しましょう。自由な発想で、新しいアプローチや技術も積極的に取り入れるとともに、イノベーションを促進します。
4.チームデザインの原則
チームデザインの原則とは、分野の垣根を超えた協力やチームワークを重視することです。1人で考えられること、思いつくことには限度があります。そのため、さまざまな分野から知識や技術・経験を集め、チームで共通の目標を達成するという意識が必要です。
5.価値向上の原則
価値向上の原則とは、製品やサービスの価値向上を目的とすることです。バリューエンジアリングでは、製品やサービスにかかるコストを下げることはあっても、その価値を下げてはなりません。ユーザーのニーズや要求に応じて、機能や特長を強化することが大切です。
バリューエンジニアリングの身近な事例
ここからは、バリューエンジニアリングの身近な事例を紹介します。
信号機
各地に設置される信号機は、使用される電球にコストや交換の手間がかかることが課題となっていました。そこで、電球をLEDにすることでコストを軽減するとともに、消費電力もダウン。LEDは寿命も長いため、メンテナンスの手間も軽減されました。また、LEDの信号は従来の電球よりも見やすく、事故の減少にもつながりました。
切削工具
金属の加工に用いる切削工具は、使ううちにだんだん切れ味が悪くなっていくため、定期的な交換が必要です。しかし、切削工具には特殊材料が使用されているため、交換のたびにコストがかさんでしまうという問題がありました。
そこで「薔薇のトゲは先端だけが固い」という事実にヒントを得て、切削の機能を担う工具の先端部分だけに特殊材料を使用することにしました。さらに、消耗したら先端部分だけを交換できるような仕組みにすることで、コストの削減に成功しました。
バリューエンジニアリングによってもたらされる効果
バリューエンジニアリングでは、次のような効果を期待できます。
コスト削減
バリューエンジニアリングの基本は「コストを下げて、価値を上げる」ことです。製品やプロセスを改善することで、生産コストや販売価格など全体的なコストダウンを実現できます。
生産性の向上
バリューエンジアリングを実践すると、製品やサービスを提供するまでのプロセスを最適化できます。製品の生産や製造のプロセスや、業務プロセスを見直すことで効率化を図れるため、生産性の向上につながるでしょう。
チームワークや技術力の向上
バリューエンジニアリングは、組織的な努力です。チームで実践するなかでコミュニケーションが円滑化され、チーム力の向上につながります。また、創意工夫をするなかで、従業員の技術力や創造力も高まるでしょう。
顧客満足度の向上
バリューエンジニアリングを実践すれば、より低価格で価値ある製品やサービスを提供できるようになります。顧客満足度が高まることで、自社に信頼や愛着を持ってくれるユーザーが増え、企業としての成長につなげることが可能です。
バリューエンジニアリングの4つの手法
価値・機能・コストには「価値=機能÷コスト」という関係があります。そのため、製品やサービスの価値を高める手法には、以下の4パターンがあると考えられるでしょう。
- コストはそのまま、機能を向上させる
- 機能はそのまま、コストを削減する
- コストを下げ、機能を向上させる
- コストを上げ、機能を向上させる
バリューエンジニアリングの実践手順
ここからは、バリューエンジニアリングの実践手順を紹介します。
3つの基本手順
バリューエンジニアリングの基本的な手順は、以下のとおりです。
- 機能定義
- 機能評価
- 代替案作成
上記の3つの基本手順は、さらに詳細な10のステップに分けられます。
詳細手順
バリューエンジニアリングの詳細手順は、以下のとおりです。
1.情報収集 | 製品やサービスの設計や製造、販売やコストなどについて情報を集める。 |
2.機能定義 | 顧客の目線に立ち、製品やサービスの機能を定義する。(目的や役割、働きなど) |
3.機能の整理 | 2で定義した機能を「目的」と「手段」の関係で整理し、機能系統図を作成する。 |
4.機能別コスト分析 | その製品やサービスが果たすべき機能の達成に必要なコストを算出し、分析する。 |
5.機能の評価 | 4で算出したコストの最低値に基づき、機能ごとにそれぞれの価値の重要度を評価する。 |
6.対象分野の選定 | 価値の程度や、コスト低減余地を計算し、機能分野を改善する優先順位を決定する。 価値の程度=機能評価値÷現行コスト コスト低減余地=現行コスト-機能評価値 |
7.アイデア発想 | 3で作成した機能系統図をもとに、アイデアを考える。 |
8.概略評価 | 7のアイデアについて「必要な機能は技術的に達成可能か」「コストの目標達成につながるか」といった点を評価する。 |
9.具体化 | 評価したアイデアを組み合わせて、より洗練されたアイデアに近づけていく。価値の高い代替案を発想するまで、このサイクルを繰り返す。 |
10.詳細評価 | 9の代替案について技術的、経済的な面から評価し、実際に行う案を決める。 |
詳細手順に付随する質問
バリューエンジニアリングの詳細手順には、それぞれ付随する質問があります。質問の内容は、それぞれの詳細手順において考えるべき内容となっています。
1.情報収集 | それはなにか? |
2.機能定義 | その働きはなにか? |
3.機能の整理 | |
4.機能別コスト分析 | コストはいくらかかるか? |
5.機能の評価 | その価値はどうか? |
6.対象分野の選定 | |
7.アイデア発想 | ほかに同じ働きをするものはないか? |
8.概略評価 | コストはいくらかかるか? 果たすべき機能を確実に実現できるか? |
9.具体化 | |
10.詳細評価 |
バリューエンジニアリングを実践する際の注意点
バリューエンジニアリングは基本的に機能の維持または向上を前提としていますが、過剰な機能については削減することもあります。その際、ユーザーが求める機能は損なわないよう注意が必要です。コストを削減する代わりに必要な機能を低下させることは、バリューエンジニアリングではなく、コストダウンにあたります。
バリューエンジニアリングの関連資格
ここからは、バリューエンジニアリングの関連資格を紹介します。バリューエンジニアリングへの理解を深めたい人や、実践的な知識を身につけたい人は、ぜひチャレンジしてみましょう。
VEリーダー
職場やグループでのバリューエンジニアリングの実践において、リーダーを務めるために必要な基礎知識を持っていることを認定する資格です。
VEスペシャリスト
VEリーダーとしてバリューエンジニアリング活動を牽引するだけでなく、バリューエンジニアリングの教育を担えるだけの知識や技術を認定する資格です。
CVS
VEリーダーやVEスペシャリストの上位資格です。米国VE協会と同等の認定基準で、バリューエンジニアリングの知識や実務経験などを問われます。
まとめ
バリューエンジニアリングとは、製品やサービスの価値を向上させるため、機能とコストの両面から改善に取り組むことを意味します。バリューエンジニアリングを実践するうえで大切なことは、ユーザーに求められる機能を損なわないことです。ユーザー目線を忘れずに、製品やサービスの価値向上に取り組みましょう。
もし、ITインフラに関する課題にお悩みなら、アイエスエフネットのITインフラエンジニア派遣サービスをご活用ください。
アイエスエフネットのITインフラエンジニア派遣サービスは、ITインフラ専門としては最大級の規模を誇る人材派遣サービスです。エンジニアの教育投資やバックサポートにも力を入れており、お客様の課題に合わせた質の高い人材をご提供可能です。
まずはお気軽にお問い合わせください。
アイエスエフネットのITインフラエンジニア派遣サービスの問い合わせはこちら
よく読まれている記事
IT人材不足をまるっと解決!